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最高裁判所第一小法廷 昭和49年(オ)500号 判決

主文

理由

上告代理人重松彰一の上告理由第一点、第三点二(一)及び第三点三について

仮登記担保関係において仮登記担保権者がいわゆる換価処分をした場合は、右換価処分の時に債権の満足を得たことになつて仮登記担保関係は消滅し、債務者はもはや債務を弁済して目的不動産の完全な所有権を回復することはできないものと解されるところ(最高裁昭和四六年(オ)第五〇三号同四九年一〇月二三日大法廷判決・民集二八巻七号一四三七頁参照)、原審が適法に確定した事実関係によれば、被上告人八木は、本件土地建物につき自己名義に所有権移転登記を経由したうえ、善意の第三者である被上告人組合との間で極度額一〇〇〇万円の根抵当権設定契約及び停止条件付代物弁済契約を締結し、これを原因として同被上告人のために根抵当権設定登記及び停止条件付所有権移転仮登記を経由したというのであつて、叙上の事実関係に照らせば、被上告人八木はすでに本件仮登記担保関係についての換価処分を了しているということができるから、上告人はもはや債務を弁済して本件各土地建物の完全な所有権を回復することはできなくなつたものと解するのを相当とする。これと同旨と解される原審の判断は正当として是認することができ、右の判断が所論指摘の判例の趣旨に抵触するものとは認められない。よつて、原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

同第二点及び第三点二(二)について

所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして是認することができないものではなく、原判決に所論の違法はない。それゆえ、論旨は採用することができない。

同第三点一について

記録からうかがわれる本件訴訟の経過に照らせば、原判決に所論の違法があるということはできず、論旨は採用することができない。

(裁判長裁判官 下田武三 裁判官 岸 盛一 裁判官 岸上康夫 裁判官 団藤重光)

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